『あの晴れわたる空より高く』 Liftoff!!

航空宇宙工学研究会(ARC)、高乃酉 星彦も絶賛しています!!文句なしの傑作だった。
「素晴らしい!」
今年は、まだ100本もエロゲを購入していないけど、今年ベストといいますか、
ここ何年かのエロゲを見渡しても、
ここまでの感動と興奮を与えてくれた作品は、
そうお目にかかれない。
ギャグで笑わせておいて、ラブコメにドキドキし、最後は溢れんばかりの青春物語で締めてくる。
個別シナリオでロケットの知識を深め、メインヒロインルートから真ルートである、 Liftoff!!で、
一気に話を盛り上げて、若者たちの生き様に涙する。
もちろんエロゲらしく随所にエロワードをかましているのも忘れない。
『あの晴れわたる空より高く』は
近年稀に見る傑作であろう。

主人公、隼 乙矢の父親、隼 武蔵。ロケットに反対していた理由。そして主人公との和解の部分は、
実に…実に感動したよ。いい話だった。
この作品の成功の秘訣は数あれど、その一つに、
大人たちの若者を応援する姿が、
実にカッコいいのだ。
以前、導木 ほのかルートでも、理事長のフォーセクションズ開催時の演説に聞き惚れたことを書きましたが、
心から未来ある若者を応援していこうとする理事長の姿に感動し、
更にメインヒロインの暁 有佐ルートでの、
主人公の父親の不器用ながらも男気ある生き様に、
更なる感動を与えてくれる。
漁に出かけ、母親の死に目にも会わなかった親父を憎み、親父を尊敬していたからこそ、
将来漁師になろうとした夢を捨て、目的もなくフラフラしていたところを有佐と出会い、
宇宙と言う海に漕ぎ出した主人公、隼 乙矢。
でも、実は親父は妻をアメリカでの手術を受けさせようと遠洋漁業に出ていたことが発覚。
ロケットの打ち上げで近場での漁ができなかったことから、止むを得ない決断だったのだが、
二人で漁に出てお互いの気持ちを打ち明けて和解するところとか、思わず涙しましたよ。
そして、この作品の最大の成功の秘訣は、

webコミック『びゃっこ劇場』より。作品を理解する上で、オフィシャルホームページの把握は必須だろう。
よそのビックタイトルを徹底的に分析して、
本気で考えてみたこと。
上記に挙げたwebコミックに制作陣が正直に述べているが、『どうやったら売れるのか』という命題に、
①学園モノ ②部活モノ ③青空をバックに ということで、選ばれたのがロケットという事なのだろう。
過去の名作からヒントを得て、自分たちなりの作品に昇華すると言うのは、よくある方法ですが、
ここまで全く別の感動を与えてくれる
作品になるとは、賞嘆を禁じえない。
もちろん、よそのビックタイトルというのは、
『この大空に、翼をひろげて』 2012年 PULLTOP
これのことだろう。
『この大空に、翼をひろげて』は、学園モノかつ部活モノであり、心行くまで“青空の見える丘”←?
をバックに、青春を満喫できた、エロゲ史上に名を残す傑作であります。
チュアブルスタッフもこの作品に大いなる感動を受け、
自分たちもこういった感動作を創ってみたい
ということが、『あの晴れわたる空より高く』の
制作動機だったのだろう。
そういえば、、『あの晴れわたる空より高く』と、『この大空に、翼をひろげて』は語感が似ていますね。
それが、参考にしたタイトルへのチュアブルなりのオマージュなのでしょう。
今のPULLTOPは『大空翼』のヒットに浮かれてしまい、今年はファンディスクのみで新作ゼロという、
驚きの運営をしていますので、いつのまにか後発メーカーに追い抜かれているのかもしれません。

作品が部活モノであることの象徴的なCGですが、こんなところにも伏線を張っているとか、
このシナリオライター、凄すぎる。
さて、『あの晴れわたる空より高く』の真ルート、 Liftoff!!ですが、このルートの前に、
「フォーセクションズ」という、機体、推進、電装、PM(プロジェクトマネージャ)の4部門で総合優勝を
彼ら「天ノ島ロケット倶楽部」通称ビャッコはしています。
詳しくは個別ルートを参照となりますが、
このLiftoff!!では、「フォーセクションズ」総合優勝を
受けて、次は宇宙までロケットを飛ばす物語です。
主人公は、誰とも付き合わずにこのルートまで来ていますが、微妙にメインヒロインである
有佐のことが気になっている描写が見られ、熱血感な主人公の女性にはやや不器用な部分が
ラブコメしていていいのです。(最後のところで、こっそり有佐のリボンを忍ばせているとかね。)

昔のビャッコのメンバーが制作した人工衛星、「ながれぼし」。
これがビャッコの過去と現在を繋いでいきます。
そして、部室で見つかった宝の地図を元に、音声データの入ったチップを発見。
そこには昔ビャッコ部員でもあった、大澄 千紗先生から当時の声で、
自分たちビャッコが作った人工衛星、
「ながれぼし」を打ち上げて欲しいとのメッセージ。
そこで、大澄先生の願いを叶えるため、廃棄されていた「ながれぼし」を見つけ、
今回打ち上げるロケットに搭載することに。
その「ながれぼし」は、ミラー加工されていて、太陽光を反射して夜空に輝くようになっており、
大気圏に突入する際に、願いを込めたメッセージを発信することができると言う。
全部で5機あるので、ビャッコの現メンバー全員の願い事をそれぞれ発信できるということで、
自分たちで流れ星を作るという目標が生まれます。
無事に「ながれぼし」も搭載され、いよいよ打ち上げとなるのですが…、

GO/NOGO判断もそうですが、こういった専門用語を多用することでオリジナリティが出ますよね。
発射一秒前で、まさかの打ち上げ中止。
前日の見回りで謎のゴムボートが海岸に漂着しているのが発見されていたのですが、
不審者は見つからず(でも有佐は、しっかり報告している)、放って置かれたのが、
ここで生きてくることに。
ロケット発射台に人がいるのを
見つけてしまったのでした。
慌てて助けに走る有佐を尻目に、打ち上げ直前の緊急停止だったため、
ロケット本体に付いている固体燃料ロケットが作動!!
(固体燃料ロケットは、一度着火すると燃え尽きるまで停止が出来ない)

ここでの下りは緊迫していて、非常によい演出でした。物語の強弱のつけ方が上手いのです。
とっさに反対側の固体燃料ロケットも噴射したものの
推力の調整がつかず、
次第にロケットは斜めに。
これでは助けに向かった有佐と不審者も巻き込んで大爆発してしまう!
そこで、メインエンジンも吹かしてロケットが倒壊しないようにするのですが、
今度は上昇する方にも力が行ってしまい、ロケツトと発射台を繋ぐボルトが次々と破断。
何とかロケットを支えるギリギリのボルト破断で止まったので助かったのですが、
どうなってしまうか分からないドキドキ感は、
実に見ごたえがありました。
複数のメンバーが緊迫した状況を刻々と報告し、今にもロケットが倒れそうになるのを
必死に何とかしようとする部分は、単にこの作品が萌えゲーではない、シナリオの確かさがありました。
不審者を助けに行った有佐のために駆けつけたビャッコメンバーが見たものは…、

ARC研の高乃西部長の妹、絆ちゃんが紛れ込んでいたのでした。以前から主人公らに懐いていたので
有佐のことを「ママ」と呼んでいます。
破片を受けて意識を失った有佐と、
泣き崩れるようじょでした。
木とロケットの破片があったので、有佐はそれに当たったのだと分かる訳ですが、
なぜ、こんなところに、ようじょ(幼稚園児)がいたのか。
実は、この幼稚園児、夜中に一人でゴムボートで侵入し、
ロケット発射台の近くで一晩中隠れていたのでした。
「どこの特殊部隊だよ!」と、ここだけは設定の強引さは否めません。
もう少し有佐が意識を失う理由付けはなかったのでしょうか。
幾ら近くでロケットの発射を見たいとはいえ、ようじょのすることではないですよね。
ここは唯一納得の行かない部分でしたなぁ。
そのまま有佐が昏睡状態となり意識が回復しない中、残されたメンバーだけで再度打ち上げることに。
ここまですんなりロケットの発射が進んでいたので、何かしら障害が必要だったのでしょうが、
この後の展開が、この作品の真骨頂といいますか、
シナリオが神過ぎる。

「死せる孔明、生ける仲達を走らす」とでもいうところか。有佐のロケットとメンバーを思う気持ちに
思わず涙しましたよ。有佐のメッセージを聞きながら、心にジーンと来るんだよね。
有佐が自分の身に、もしものことがあった時を考えて、
乙矢にメールを送っていたのでした。
そこに書かれていたURLには、有佐がいなくなったときのロケットの再打ち上げ計画が、
状況に合わせて何パターンも書かれているという用意周到ぶり。
(パスワードがビャッコというのも、彼ら専用という部分が強調されていて、いい演出だった)

ここで、部室に書かれていたホワイトボードのメッセージが生きてくるのです。
見事。見事な伏線回収でした。
そして、有佐からの「死んでもロケットを打ち上げる」という言葉から、

伏線に見せない伏線を用意するとか、これは…プロの犯行だ!
メンバーは部室にあった言葉が
本当であることに驚愕するのでした。
別作品ですが、『春季限定ポコ・ア・ポコ』などでもタイトル画面に「諦めたら試合終了!!」と、
スラムダンクばりに黒板に書かれていましたが、正直そこまでの伏線ではなかった訳で、
ここまで作品の主題を意識した言葉だったとは思いませんでした。
単なる標語ではなく、これが伏線としていたとか、
このライターが天才すぎる一つの現れでしょう。
そして、この作品を絶賛する要素として、

全てを合理的に考えてくることから、努力と根性で立ち向かうビャッコとは反目していたのだが、
認めるところは素直に認める柔軟性のある男だったのだ。
ARC研部長、高乃西 星彦のカッコよさだろう。
ロケットの再打ち上げで部品も時間も人手も足りず、途方にくれる中、
高乃西がビャッコに手を差し伸べるに当たって、ARCの部員へ向かっての演説が熱い。
「夏の全国大会のことだ。たった5人しかいない弱小のロケット部に、
我々ARCはことごとく敗北を喫した。」
「誰か一人でも、彼らが優勝する可能性を考えていた者はいるか?」
「あの機体部門のフィンとフェアリングを、電装部門のジャイロを、推進部門の液体ロケットエンジンを」
「ビャッコはたった5人で作った。素晴らしい技術と執念だった」
「悔しかったろう。僕は悔しかった。君たちは僕の指示通り、無駄のない効率的な作業を完璧にやって
のけたのだから」
「優勝を逃したのは他でもない、僕のミスだ」
「君たちの能力を僕が低く見積もったのが、原因だ」
「だから、もう見誤らない」
「リベンジだ。今度こそ彼らに、我々ARCの本当の力を見せてやれ」
「5日だ。僕はできると思う。君たちはどう思う?」
ここまで言われて、「できます!」以外の答えはなかったろう。
理事長のフォーセクションズ開催の演説もそうでしたが、力のこもった演説に胸が熱くなります。
しかも、この高乃西部長、
散々ビャッコのことをけなしていたのに、
これだけ熱い思いでビャッコを見ていたという
事実に胸を打たれるのです。

方向性は違えど、ロケットを愛する心は同じかそれ以上だったという驚き。
そして、青春とは反目しあっていても最後には手を取り合うもの。負けを認める素直さに惚れます。
この高乃西部長、ロケットの再発射に関する申請も、高乃西重工100%出資の子会社として、
主人公を社長にして株式会社ビャッコを設立。
法人として対等な関係で発射台を運営しているAXIP(宇宙航空研究開発学園都市計画)と
交渉できるようにしたのでした。
大勢の協力を得て、最後には夢を勝ち取る姿に
青春の香りを感じ、うるっと来るのです。

ブランドの限界だろうが、ロケットの発射シーンくらいはアニメーションで見たかったかもしれない。
ここは『大空翼』くんで、紙飛行機やグライダーを飛ばしてきた、PULLTOPには負けるところだろう。
そして、遂に多くの人の夢を乗せて、純学生産のロケット発射。
有佐にもロケット発射の瞬間に立ち合わせるため、制服に着替えさせて(寝巻きではカッコつかないため)、
みんなで管制室に詰めていたのですが、
それでも有佐の意識が戻らない。
そして、ロケットは無事打ち上げ成功。人工衛星、「ながれぼし」がロケットから次々と切り離され、
地球を一周した後、送信された5機の「ながれぼし」から送られたメッセージは、

そう、それまでの個別ルートでのヒロインたちの悩みがあるからこそ、ここでの感動があるんですよね。
有佐の回復を願う、ビャッコメンバーの声だった。
将来の夢を願うはずが、実家の工場の再建を願うはずが、手術の成功を願うはずが、
みんなが願ったのは、“有佐の意識が戻ること”だったのだ。
みんなの思いが一つになるとか、中々に感動するところなのです。
しかし、それでも、有佐の意識は戻らない。

どこまでも用意周到な有佐ビャッコ部長に驚かされますが、ご都合主義もここではありでしょう。
そして、最後に事前に録音しておいた有佐からのメッセージが「ながれぼし」5号機から流れ出し、
そこにはビャッコメンバーへの感謝の言葉が語られ、
印象的なBGMの効果も合わさって、
ちょっと涙するところでした。
ですが、それでも有佐の意識は戻らない。
これを逃すと有佐は本土の病院に転院となってしまうが、決して諦めない我等が主人公。
純学生産ロケットを発射したことで話題性もあることから、またロケットを打ち上げる決意を固めたその時、

もちろん、絶対に意識を回復するのは分かってました。でも、それでもクライマックスへの過程が
丁寧かつ情熱的で、心から良かったと思える瞬間ですよね。
有佐が目を覚ました!!
皆の願いが、そして、有佐からの最後のメッセージ「皆の夢が叶いますように」が、
奇跡を起こしたのです。
奇跡というのはKey作品などで多用されたように、多用すると白けるものがありますが、
やはり最後にはハッピーエンドになるのが良いのです。起承転結ではないですが、
締めは後味がいい方が納得がいくものです。

画面では見えなくなっていますが、上空には5機の「ながれぼし」が降りそそいでいます。
全てのエピソードをクリアした達成感と共に心地よいラストでした。
そして、意識を回復した有佐を連れ、全員(ARCや他の宇宙研も含む)で、
太陽の光を受けながら(衛星フレア)落ちて行く「ながれぼし」を見上げながらのエンディング。
みんなで眺める流れ星の格別なこと。
全ては丸くおさまり、最高のラストシーンでした。
いや、凄かった。途中、何度も彼らの情熱に泣きながらシナリオを進めさせていただきました。
昨今の女の子とイチャイチャしたいだけの凡ゲーとは全く嗜好の異なる、
実際に物語が書けるシナリオライターだからこその奇跡だと思うのです。
ここまで感動作を書いてくるというだけでも、
まだまだエロゲも捨てたもんじゃないと確信するのです。
それにしても…、
この真ルート、Liftoff!!
回想シーンが全くない!

有佐ルートから。この状況で真面目な話をしているとか、かえってエロさが増しているように思える。
有佐は「部内での恋愛禁止」と言った手前、あなたじゃなくて、あなたのおち○ちんが好きなの!とか、
結果的に自らエッチな言葉をを言わされているのが、エロゲらしくて実にいい演出だったよ。
むしろここでエッチシーンとかあると、感動が薄れると言いますか、
話の腰を折りかねないので、
敢えて削除したのでしょう。
そういえば、個別ルートクリア後のオマケコンテンツもエッチシーンでしたけど、
あれって用意したけどシナリオの都合上カットした部分でしょうね。
いずれにせよ、
泣いて笑って、最後には大きな感動が待っている。
久しぶりにやりがいのある作品でした。
ここまで完結した物語だから続編は有り得ないでしょうが、
普段のビャッコの日常と言いますか、メンバーでワイワイやっている姿をもう少し見たかったかも。
仲間との楽しい語らいとか、キャラの掛け合いが面白い、この作品ならではの魅力だろう。

そんなわけで、

まもなく、チュアブルソフトの新作が
発売されますね。
こちらはオーソドックスな学園モノで、ドタバタラブコメディと言ったところでしょうが、
全く別チームの作品だけに、『はれわた』の感動には及ばないでしょう。
(もっとも、体験版をやった限りでは水準以上はクリアーはしているので、買って損はないはず)
それにしても、今月は『蒼の彼方のフォーリズム』や、『恋する彼女の不器用な舞台』といい、
注目作が多いね。
我々は彼女たちの笑顔だけを生きがいにしている以上、可能な限り店舗から家に連れて帰るのが
「礼儀」なのですが、今月は少々骨が折れそうだ。

































































































